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ジャガー・ランドローバー ジャパンが開催する雪上試乗会が、今年は斑尾スキー場近郊で開催された。普段はそのユーティリティとオンロード性能を中心にレポートされる二社だが、特にランドローバーはこうした低μ路での走破性と安定性こそがPRのしどころ。そういう意味で、この雪上試乗会を、恒例事業として開催してくれるインポーターの姿勢には頭が下がる思いだ。またジャガーも、新進気鋭のSUV「FーPACE」を持ち込んで、その雪上性能を存分に見せつけてくれた。
今回ランドローバーのイチ推しは、昨年登場してメディアの話題をさらった「イヴォーク・コンバーチブル HSE Dynamic」。オープンボディのSUVという未開のジャングル...ならぬ未開のジャンルに果敢に挑み、のっけから高い完成度をもって多くのジャーナリストを唸らせたのは記憶に新しいところだが、その雪中性能やいかに!?
とはいいつつ、すでにボクは昨年イヴォークのクローズドモデルで、場所こそ違えどその雪上性能を堪能している。兄貴分のレンジに対してちょっとそっけないボタン式のテレイン・レスポンスは、しかしながら発進時のトルク制御やコーナリング時のトラクション確保に対し緻密に、しかもその作動を感じさせないほどスムーズに働く(選択したのはスノーモード)。だから極端に言えば、ドライバーはハンドルを切りながらアクセルを踏み込むだけで、積極的にクルマを曲げることができてしまう。
オープンボディになってもその作動は問題なく働き、圧雪路面では相変わらずのたくましさでその存在感をアピールしてくれた。
ただ日陰が多く、クルマ通りの少ない路面では、少しばかりその印象は異なる場面があった。いったんクルマを思い切り曲げてしまえば、前述した通りその後の制御は素晴らしい。しかし一般公道という常識から言えば、そのステアさばきは"探りながら"のアンダーステア基調となる。そんな場面でコンバーチブルのハンドリングは、応答遅れが目立った。
特に下り坂では舵が効かず、緩やかなカーブでもクルマがアウト側の雪壁へと迫ってあわや!という状況を体験した。
圧雪路の走破性に気を良くしていたわけではない。十分注意しながら走った結果だとボクは思っているのだがこうなった理由は、端的に言えばその足下にマッド&スノータイヤを履いていたからだろう。ランドローバーは積雪地域での国際試乗会を昨年開催し、そこでもM&Sで全てのプログラムを無事に終了させた実績がある。また昨年長野で開催されたこの試乗会でも、同じタイヤで走りながら危うさを感じることは一度もなかった。
でも今年は真逆の印象を少しでも持ったわけだから、欧州に比べて気温が低く、アイスバーンを作りやすい日本の路面は、やっぱりナメちゃいかんなぁ...と痛感した。大切な愛車や彼女を守るためにも、選ぶならスタッドレスが最適だと思った次第だ。
ただ下り坂にこれが顕著だったことを考えると、やはりクーペに対して200kg以上重たい2020kgという車重も、そこに影響しているのだと思う。
また乗り心地面も、ドライ路面で感じたあのしっとり感が薄れていると感じた。積雪路や凍結路は当然路面の起伏がアスファルトよりも激しいから、こうなるのは仕方ない。
だがしかし! このようなこまごまとした分析を一気に吹き飛ばすだけのバズーカ砲を、このイヴォークは持っている。そう、真冬のフルオープンである!!
時速48km/hまで対応する幌の開閉は、雪道で走る状況下でもドンピシャ。21秒のアトラクションはスイッチを押すときからドキ時と心臓を高鳴らせ、ガバッと開いた屋根から雪景色が覗いたところでクライマックスを迎える。
暖房とシートヒーターは全開。ステアリングヒーターもアクティブ!
ウィンターウェザーでのオープンドライブは、まるで露天風呂にでも浸かっているかのような心地良さ。粉雪舞う風の巻き込みすらも心地よく、まったりと走っていても退屈しらずで楽しい。
ちなみに後部座席は風と雪の巻き込みが激しく、前2座席の幸せな雰囲気とはまるで正反対。だから、もしアナタが後部座席にいたら、徹底的に幌を上げるのは阻止した方が良い。熱愛カップルと一緒になった日には、その温度差からしてもう最悪な一日となること請け合いだ。
つまりこのコンバチは、テッテー的に"二人のためのSUV"。来年の冬は、スタッドレスを履いて彼女とGo!である。
浮かれ気分のコンバーチブルとは違って、レンジローバー ヴォーグの走りはどっしりと安定した、横綱相撲といえる確かさが魅力だった。
今回試したモーグルステージは、昨年のように内輪を大きく浮かせてしまうほどの起伏はなかったが、それでも荒れた路面ではエアサスが見事にショックを吸収しながら乗り越え、下り坂ではヒル・ディセントコントロールのブレーキ制御が素早く状況を察知して、その巨体をゆっくりと下降させてくれ、そのたくましさには惚れぼれとした。
特に見事なのはセンターデフの電子制御。ディスプレイに表示されるデフロックの様子を見ていると、旋回時にはこれがフリー方向へと弱められて行きターンインをスムーズに。アクセルオンではきちんとロック方向へと駆動が調整されているのがわかる。
その間にもトラクションコントロールや内輪ブレーキなどの制御が全方位的に細かくアシストを加え、さも当たり前のように雪深いコースを走りきってしまう。
特に今回は雪質が厳しい状況だったため、より積極的に旋回姿勢を作り出してくれるセンターデフ式4WDの走破性に、FWDベースのオンデマンド4WDであるイヴォークには可哀想であるが確かな包容力を感じてしまった。ちなみにタイヤは、同じくM&Sである。
また340ps/450Nmのパワー&トルクを発揮する3リッターV6スーパーチャージャーは、この巨漢に対して暴力的に過ぎず、その紳士的で連綿とした出力特性に終始うっとりさせられる。ガソリンエンジンらしい軽快なアクセル追従性も気持ち良く、レンジローバーという偉大なネームに相応しい実力を見せつけてくれた。
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【試乗記】ジャガー・ランドローバーの注目車種を雪上に持ち込み徹底的に分析:山田弘樹 originally appeared on Autoblog Japan on Fri, 03 Mar 2017 03:00:00 EST. Please see our terms for use of feeds.
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