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世界で一番売れているボルボ、XC60。そのファイナルエディションである「クラシック」に試乗した。
ご存じの通りここ数年のボルボは躍進著しい。V40の成功で完全に波に乗り、エンジンはこれまで培ってきた直列6気筒や5気筒ターボを切り捨ててディーゼル/ガソリン共に「4気筒のみしか作らない」と合理化を高らかに宣言。そして旗艦車種であるXC90に至っては、とうとう「スケーラブル プロダクト アーキテクチャ」(SPA)によるモジュールシャシーでの新しい門出を披露した。
特にこのモジュール構造は、近年フォルクワーゲンやトヨタのような巨大企業が推し進める部品共用技術であり、年間生産台数が50万台を超えたばかりのメーカーが、大メーカーたちと同レベルのインフラを整えたその姿勢には、本当に驚くばかりである。
そういう意味で今回試乗したXC60は、一世代前のシャシー構造。ベースとなるのはセダン/エステートのS60/V60で、その登場も2008年と8年も前の話だから(日本市場導入は2009年)、普通に考えれば、ちょっと古くさい乗り味をイメージしてしまうところだ。
だがフォード傘下時代に得たプラットフォームをベースに、これをボルボ自身が煮詰めたシャシーの出来映えは今でも素晴らしく、これからSPAを推し進めるボルボにとっても、ここで得たノウハウが礎となっているとさえ感じられた。
XC60クラシックにはふたつのバリエーションが存在する。共に2リッターの直列4気筒で、ディーゼルターボを搭載する「D4」は190ps/400Nm。ガソリンターボを搭載する「T5 AWD」が245ps/350Nmを発揮し、今回は後者に試乗した。ちなみにAWDは、これまで2.5リッター直列5気筒ターボの「T5」だった。
クラシックとしての装備で目を引くのは、センターコンソールとドアパネルに備え付けられたウッドパネル。この他に本革シートやシートヒーター、パノラマガラスサンルーフなどがファイナルエディションとしての花を添え、派手さこそないが落ち着きのある室内空間を演出している。またインターネット接続機能である「SENSUS CONNECT」や、12セグ地上デジタルTVがさらなる快適性を付け加えてくれている。
しかし正直XC60で躊躇する部分があるとしたら、シャシーの古さというよりはこの一世代前のインテリアだ。特に助手席空間を広く取るダッシュボードの造形や、樹脂パッドの質感は、いくら木目パネルで化粧直ししようとも安っぽさを隠せない。これはグレード的なコストダウンの結果とも言えるが、次世代モデルでどのように変わって行くのか興味深いところである。
またXC90が9インチの縦長タッチパネルをセンターコーンソールにドーンと配置して未来感をアピールしているのに対し、こちらは横長の7インチモニターが付くのみだから、どうしても古くさく見えてしまう。XC90は上級セグメントだから直接比較するのはフェアじゃないが、次期型XC60も同様の手法でインテリアをまとめてくるのでは? と考えると、ちょっとだけ現行型の購買意欲に"待った"が掛かってしまう。
<Photo : XC90>
ただ冷静になって考えると、XC90をはじめとした現代車のインフォテイメントは、まだまだ過渡期であり中途半端。たとえばXC90のタッチパネルがどれだけ先進的かというと、その実エアコンなどの各種スイッチ類がデジタル化された程度で、操作に慣れるまでは逆にやりにくかったりもする。つまり目新しいが、使い勝手がよいかといえばそうでもないのである。そしてその目玉は「Apple CarPlay」くらいなもの。ボイスコントロール機能だってフールプルーフとは言いがたいし、インターネットによるMAP機能はまだまだ通常NAVIには及ばない部分も多い。
だからどうしても次期型が出るまで待つ必要があるか? と問われれば、「新しいものじゃなきゃいや!」という人以外は、その実そうでもないと思うのだ。現行型なら末期モデルとして値引きだって期待できるだろうし、そう考えると総合的な魅力はとても大きい。
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【試乗記】『ボルボ』XC60「クラシック」。クルマに乗り味の本質を求めるユーザーには納得してもらえると思う。:山田弘樹 originally appeared on Autoblog Japan on Fri, 20 Jan 2017 03:00:00 EST. Please see our terms for use of feeds.
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