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リンカーンといえば、キャデラックと並びたつ北米プレミアムブランド。ナビゲーターといえばそのリンカーンのフラッグシップモデル。

5mを超える長さ、2mを超える幅、2.7トンもの重量、豊富な装備を誇る豪華絢爛なフルサイズSUVである。大きいこと、強いことが正義であると信じて疑わないアメリカ人にとって、威風堂々とした巨体に大排気量V8エンジンを搭載したこの種のクルマはいつだって憧れの対象だ。

そのナビゲーターが、ついにダウンサイジングの波に飲み込まれた。エンジンを従来の5.4L V8から3.5L V6ターボへと積み替えてきたのだ。最高出力は304psから385psに、最大トルクは495Nmから624Nmへと向上したものの、ダウンサイジングエンジンがナビゲーターの個性にどんな影響を与えたのかは実に興味深いテーマである。


結論から言うと、ナビゲーターはやはりナビゲーターだった。加速するときも、減速するときも、曲がるときも、常に巨大な慣性力を感じる。キビキビ感という言葉とは対照的な、ゆったり、どっしりした乗り味は、まさに大船に乗った気分。とくに、可変ダンパーを「コンフォート」にセットしたときの大船に乗った感は相変わらずで、こういうのが嫌いじゃない僕としては正直ホッとした。


モードは他に「ノーマル」と「スポーツ」もある。スポーツ? このクルマでどんなスポーツするの?と思うだろう。ナビゲーターでワインディングロードを激走するなんて考えられないし、そもそもそういう気分にさせないのがナビゲーターのいいところ。ならば使い道はないのかというと、僕なら高速道路を走るときにスポーツを選ぶ。突き上げはやや大きくなるが、バネ上のフラット感は明らかに増すし、不測の事態に遭遇したとき、急ハンドルで避ける能力も確実に上がるからだ。

V6ターボは、出力面だけでなくフィーリング面でもダウンサイジングの悪影響を感じさせない。フル加速時の速さは明らかに向上したし、最新のターボエンジンらしくレスポンスの遅れもないため、先代V8エンジンに勝るとも劣らない極太低速トルク感をちゃんと味わえる。ドロロロロッというV8特有の鼓動感こそないものの、最近のアメリカンV8は昔ほどドロドロしていないから、V6化で薄味になっちゃったなぁという感覚もない。それでいて燃費はよくなった。つまり、ダウンサイジングで失ったものはないということだ。ただひとつを除いて。


それは何かというと、「V8」という記号性だ。宿命のライバルであるキャデラック・エスカレード(6.2LV8)が好調なセールスを続けるなか、なぜフォードはナビゲーターにV6を積んだのか。実は現行ナビゲーターはモデル末期であり、来年にもフルモデルチェンジが予想されている。MKXやMKTといった弟分たちがヨーロピアンテイスト方面に舵を切っていることを考えると、次期ナビゲーターがその動きに追従する可能性は高い。そう、ライバルをエスカレードに限定せず、すでにダウンサイジング化を進めている欧州性プレミアムSUVにも拡げれば、エンジンのダウンサイジングはまったく不自然ではないのである。

そういう意味で、アメリカンテイスト満載のボディに最新のダウンサイジングターボを搭載した2016年型ナビゲーターは過渡期のモデルと言えるだろう。そして、過渡期だからこそ「一粒で二度美味しい」のかもしれない。
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【新春企画】4W×3W×2W 北米車一気乗り!LINCOLN NAVIGATOR:岡崎五朗 originally appeared on Autoblog Japan on Sat, 09 Jan 2016 03:00:00 EST. Please see our terms for use of feeds.
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